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Tau Tao Tai タウ・タオ・タイ
・・・おののく魂はいつしか鎮められていく
いつのころからだろう? わたしは迷ったときや決断を迫られたとき,こころに呪文めいたメッセージを唱えるようになった。
タウをもって,タオにしたがい,タイをつくしぬく。
たえずここに在るオノレをしんじ,まきおこらんとするウネリに命運をゆだね,ひたすらアランかぎりの生をそそぎこむ・・・といった意味あい。
いまもその余韻は,みずから思い定めたとはいいながら,ざわついてしかたない胸のうちを落ちつかせてくれる。
そう・・・すべて,これでいいのだ。
なんぴとも善し悪しを抜きにしては渡っていけぬというのなら,世間に蔓延るいかなるシガラミもあるべくしてあるもの,一切かまわないではないか。
あるがままに,オノが信ずるところへ向かっていくだけのことだ。
はっきり覚悟をもって意識したのは,13 年まえ,真子とさいごに逢ったおり。
「あなたにはちゃんと・・・命をかけて愛してくれるヒトがいるんだもの」
そんな一言がなければ,すてがたい漠とした思惑が,とんでもない決心にまでたちどころに昇華してしまうことなどありえなかった。
だからといって,彼女をうらむつもりなんか,これっぽっちもありはしない。
自死とは,いずれ至らねばならない,ほかならぬ『オレの生きる道』なのだ。
あれから幾度となく自問してきたけれど,いつだって結論は変わらない。
ながらく旅立つ日を,とおく眺めながら生きてきた。
来たるべきトキがくるまでに,持てるものをことごとく使い果たしたかった。
なにもかも燃やし尽くし,ねがわくは灰となって天地に散ってしまいたい。
まっとうしてみせる自負なんぞなかったものの,さほど悲観もしていなかった。
思ったとおり,ちかく見えてからが正念場,じつはホントの宿命の道なのだ。
しぜんとペンを握りしめ,わたしは私自身を見つめはじめた。